MPU-PC98II
MIDIインターフェイスとは
MIDIインターフェイスとはパソコンとMIDI対応機器との間を取り持つインターフェイスのことです。最近ではパソコンだけでなく、タブレット、スマホ向けの製品も登場しています。
現在のシンセは USB や IEEE 1394 など別の方法でパソコンと接続することが多く、また、高品質なソフトシンセがありますから、別途MIDIインターフェイスを用意する必要性は少なくなりました。
今回は1990年代に使われていた代表的なMIDIインターフェースであるローランドの MPU-PC98II を取り上げます。
MPU-PC98II
ローランド創立25周年(1997年)のときの小冊子によりますと、「世界初のパソコン用インテリジェントMIDIインターフェイス」が MPU-401 (1983年)だとのこと。
その後、国内で圧倒的なシェアを誇っていたNECのPC-9800シリーズ用に発売されたのがローランドの MPU-PC98 で、今回ご紹介する MPU-PC98II はその廉価版です。ともに当時PC-9800シリーズで使われていたCバスという拡張スロットに挿すためのボードとなっています。
DTMという言葉が使われ始めた1990年代、先行機種の MPU-PC98 とこの MPU-PC98II が日本ではMIDIインターフェイスのデファクトスタンダードの地位を獲得します。DTMに必要な機器をパッケージにしたミュージ郎シリーズ(初代, Jr., 300, 500 など)にもこのインターフェイスが同梱されていました。
MPU-PC98IIの接続端子
MIDI端子
MIDI IN が1つ、 MIDI OUT が2つ並んでいますが、それぞれの MIDI OUT を独立して使うことはできず、どちらからも同じ信号が出力される仕様です。
メトロノーム・アウト
前述の MPU-401 や、この MPU-PC98II にはメトロノーム機能も搭載されていました。ボード上にメトロノーム音用の小さなスピーカーが配置されるとともに、アンプなどに接続するための専用のメトロノーム・アウト端子(写真左側のミニジャック)も付いていました。
MPU-PC98IIボードの設定
MPU-PC98II は、ボード上のディップスイッチとジャンパスイッチを使って、I/Oポート・アドレスと割り込みラインを設定します。この時代を知っている方、どうです?懐かしいでしょ?^^
I/Oポート・アドレスの設定(ディップスイッチ)
I/Oポート・アドレスの工場出荷時のデフォルトは、データ・ポートが E0D0h 、コマンド/ステータス・ポートが E0D2h です。
ポート・アドレスの 16bit のうち、黄色でマークしている 4bit がディップスイッチと対応しています。以下にアドレスとスイッチの対応を示します(表のピンクの部分がデフォルト)。
DIP SW | Port Address | DIP SW | Port Address |
---|---|---|---|
C0D0h / C0D2h | E0D0h / E0D2h | ||
C4D0h / C4D2h | E4D0h / E4D2h | ||
C8D0h / C8D2h | E8D0h / E8D2h | ||
CCD0h / CCD2h | ECD0h / ECD2h | ||
D0D0h / D0D2h | F0D0h / F0D2h | ||
D4D0h / D4D2h | F4D0h / F4D2h | ||
D8D0h / D8D2h | F8D0h / F8D2h | ||
DCD0h / DCD2h | FCD0h / FCD2h |
割り込みラインの設定(ジャンパスイッチ)
基盤にも書かれている通り、 INT 5, INT 2, INT 1, INT 0 の4つから選べるようになっています。工場出荷時のデフォルトは INT 2 。
プログラミングのための技術情報
今の時代に MPU-PC98II のためのプログラムを書く人がいるとは思われませんが、一応、情報源として以下のものを挙げておきます。
ローランドの公式サイトからダウンロードできる「MPU-401 テクニカル・リファレンス・マニュアル」( MPU-PC98II とも共通)。プログラムからインターフェイスを扱うためののための情報が一通り手に入ります(ただし、サンプル・ソースはアセンブリ言語)。
当時の関連書籍としては、ジム・コンガー氏の『MIDIのためのCプログラミング』がC言語によるプログラミングを扱っています。MPU-401 向けに書かれたものですが、 I/Oポート・アドレスが違うことなどに注意すれば問題なかったと記憶しています。
以上、MIDIインターフェイス MPU-PC98II について振り返ってみました。 I/O ポートを介して音源を制御していた頃が懐かしいですね。
ちなみにブログのタイトル画像にはそのころに書いたソースをデザインとして取り入れています。注意して見ると、 midi_out だとか (port << 8) 、 velocity などといった文字列が見つかると思います。
参考文献
本記事の作成にあたり、以下の資料を参考にしました。
- 「MPU-PC98II マニュアル」ローランド, 1989
- 25 Years of Hits! (ローランド創立25周年の小冊子, 1997年4月)
- 大西保弘『フリーソフトライブラリMIDIコレクション』秀和システムトレーディング, 1994